アニメ版　ガラスの仮面・第16話「母の面影」

●アニメ版「ガラスの仮面」れびゅう　　　●表紙
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この作品をDVDで見ることが出来ます！　「ガラスの仮面」TVシリーズ　1～23話完全収録
特典：マヤの台詞にあなたがチャレンジ！台詞無し劇中劇「嵐が丘」、番組予告、解説書など

　ガラスのように　
　もろくこわれやすい仮面　
　人は素顔を隠して　
　それをかぶる　

第16話　母の面影
　
～長谷川…！いい、スカウトマンになったな。（速水真澄）～

　好評の内に千秋楽を迎えた「石の微笑」。
　初日はガラガラだった客席（ゴザ）も、満員になるほどになりました。
　さあ、今日は向かいの立派なオリオン劇場で「ハムレット」を公演していた劇団の人たち、そして月影先生も来ています。
　失敗は許されません。
　おや、サングラスをかけた男の人もいますね。
　いよいよ、開幕です。
　でも、マヤは別のことで頭がいっぱいでした…。

　２時間前。
　地下劇場に向かうバスの中です。

　「母さん！」

　マヤが叫んでいました。

　母さんが！
　２年間会えなかった、あの母さんが東京にいる！
　いったい、いつの間に２年という月日が！

　「バスを止めて！」

　おもわずバスを降りて、周囲を探すマヤちゃん。
　でも、人が多い東京。
　なかなか見つかりません。
　「石の微笑」の開演時間もせまっています。
　このまま探し続けるわけにもいかずに、マヤたちはその場を後にしました。

　そして、もうすぐ開演だというその時。
　メイクのまま、電話をかけにいく姿がありました。
　電話をかけに行ったのは、もちろんマヤ。
　相手は、満腹軒のおかみさんでした。

　「マヤちゃん？　マヤちゃんなのかい？　ずっと連絡もくれないで！　春さん？　春さんはね、ここの所、ずっと寝たきりでね。サナトリウムで、静養してもらってるんだよ。」
　「寝たきり!?」
　「そうなんだよ、なんでも、結核みたいでね。肺をかなり悪くしてるようだよ。」
　「そ、そんな…（がーん）。」

　２年間、何も連絡を取れないでいた母親が、重病になっていた…。
　動揺は隠せません。
　でも…、そのマヤの姿は人形…。
　なかなか不気味です…。
　マヤちゃん…（by 桜小路優）

　（結核…。だから、今日見かけた時、あんなにやつれていたんだ…。）
　（あたしを探しに来たのかしら…。）
　（ごめんね…、母さんにはあたし一人しかいないのに…。）

　おっと！
　今は舞台の真っ最中だよ！
　物思いにふけってる場合じゃないよ、マヤちゃん！

　と、筆者が思ってる間もなく、マヤちゃんの頬をひとすじの涙が…。

　「仮面が…、はがれた…！」

　月影センセ、思わずつぶやきます。

　意志のない人形のマヤが、涙を流した…。
　それに気がついた麗さん、思わず持っていた水差しをひっくりかえしてマヤにぶっかけちゃいました。

　「ありゃりゃりゃりゃ、うっかり水かけちゃった。大事なエリザベスが水びたしだ。」

　そう言い残すと、マヤを抱えて舞台裏に。
　麗の機転のおかげで、舞台は救われたのです。
　それにしても、いくら人形の役とはいえ、マヤを抱えちゃうなんて…。
　力持ちじゃん、麗！
　男らしいったら、ありゃしない！

　「役者が舞台の上で、仮面をはずして素顔を見せるとは何事です！」

　月影センセ、おかんむりです。
　ムリもないです、いくら観客にばれなかったとはいえ、あんな失態を見せたんですから。

　「先生、マヤは開演前に行方不明の母さんの姿を見て動揺していたんです…。」
　「いかなることも、舞台で仮面をはずす理由にはなりません！」

　麗の優しい言葉をかけてくれますが、そんなことはカンケーありません。

　「マヤ！　あなたは役者失格です。次の舞台には出なくてよろしい、しばらく謹慎してなさい！」

　しょぼーん。
　しょうがないよね、マヤちゃん。

　そんなマヤに、麗がまた優しく声をかけてくれます。

　「しかたないよ、あたし達がかぶっているのは『ガラスの仮面』なんだ。」
　「『ガラスの仮面』？」

　マヤが、何それという顔で麗を見つめます。
　愛読書は「花ゆめ」だというのに、マヤは「ガラスの仮面」の存在を知らなかったんでしょうか？
　そんなことにはお構いなく、麗が話を続けます。

　「そう、もろくてはかない『ガラスの仮面』…、だからすぐにはがれて素顔がのぞく。その『ガラスの仮面』をかぶり続けられるかどうかで、役者の才能が決まるんじゃないかな…。」
　「『ガラスの仮面』…。」

　その頃、大都芸能社長室では－。
　ある男が、若社長（いけず）に話をしていました。
　あっ！　よく見たら、この男。
　地下劇場にいた、サングラスの男じゃあーりませんか！

　「…以上が、ヘレンケラー候補の少女たちです。あ、それから、こちらの写真は別格です。」
　「別格？」
　「えぇ。私はこの少女の声も動作も見ておりません、人形の役でしたから。でも、その動かない人形の役の中に、何か秘めたる可能性を感じました。」

　若社長（シャイ）、その写真をまじまじと見つめて一言。

　「よし、候補に入れておいてくれ。」

　おぉ、マヤの知らない間に、大きな話が進んでますな！
　そしてさらに、部屋を出ていこうとするサングラスの男に向かってもう一言。

　「長谷川…！　いい、スカウトマンになったな。」

　そして、その少女にもっと前から目を付けてたオレは、もっといい男…。
　そうきっと、思ってるに違いない、若社長（仕事が命も疲れるよ）でありました。
　さて、マヤちゃんはといえば、朝から晩まであっちに行ったり、こっちに行ったり。
　月影センセからは、謹慎を言い渡されましたが、そんなことでおとなしくしているマヤじゃありません。
　なにしろ、ほんの一瞬とはいえ、母さんの姿を見たのですから。
　ひょっとしたら、まだ東京にいるかもしれない…。
　そんな思いで、東京中を探し回るマヤでした。

　とはいえ、一人で探すのには東京は広すぎます。
　探し疲れて、たどりついたのはとある劇場の前。
　そこでは、「夢宴桜」という舞台をやっていました。

　「夢宴桜」といえば、亜弓さんが立っている舞台。
　ここらへんは、なかなかご都合主義で話が進みますね。ハイ。

　「わざわざ、ありがとうございます。若社長じきじきに、お見えになられるなんて。」
　「いや、なになに。」

　おや、あの若社長がやって来てますね。
　そして、そこでやはりというか、事件が起きちゃいました。

　「大変だ！　千絵役が足をくじいて立てなくなった!!」

　おぉ、そりゃ大変だ！
　開演一時間前だというのに！
　舞台裏はもう、大騒ぎです。

　「しかたがない、脚本を直す！　千絵の出番を削るんだ！　大至急、脚本家の磯村さんに連絡を！」
　「いや、その必要はない。」

　「えっ？」

　若社長は、玄関の前に座っているマヤの姿を、見つけていたのでした。
　さすが、そういうことにはめざといねぇー。
　しかし、そんな１時間しかないのに…。
　でも、若社長、マヤの実力ならよぉーく知ってます。
　セリフなんて、すぐに覚えられちゃうことも。
　若社長、自信満々にマヤに話しかけに行きました。

　「あたしが？　代役を？　あなたの言うことなんか、聞きたくありません！」
　「そうはいかない、君はやるね。君の、たった一人のファンとやらも来てるかもしれないし。」

　わざとらしぃぃ～～。
　そういう手で来たか！
　そういうわけで、謹慎中の身だということをすっかり忘れ、「夢宴桜」の千絵役を演じることになったマヤでした。

　しかし、物事そうなにもかもうまくいくとか限りません。
　開演一時間前にイキナリやってきて、大女優（にすでになっちゃってる）の姫川亜弓と共演するなんて…。
　そこには当然、妬みというものが発生します。
　案の定、共演者の汚い手によって、マヤは台本をすり替えられるという目にあってしまいました。
　マヤが開演前に覚えたセリフは、実は全然演ずることのない、改変前のもの…。
　それが分かったのは、もう舞台が始まった後でした。
　時間がありません、マヤの出番です。
　もう、ひきかえせない…。
　言うべきセリフも分からないまま、マヤは舞台へ出て行きます。
　そして…。
　自分の出番でもないのに。
　亜弓さんも、舞台へ行きました。

　（マヤさん…、こんな形での対決になるとは思いもしなかったわ…。）

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