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見てないアナタも大丈夫
ガラスの仮面完結編

1999.10. 2作成

- 3 -

 「どうして…?」
 「どうしたんだ、こんな雨の中。」

# オマエこそ、どうしたんだよ
 「行こう!」

 自分が着ているコートの中に無理矢理マヤを押し込む真澄。

 「どこかで雨宿りしよう。」
 (あたしを守ってくれている…。紫のバラの人…。)

# さぁ〜、いよいよ社務所のシーンだぁ〜

 社務所のはず…なんだけど、物置小屋にしか見えない部屋の中のストーブに薪をくべる真澄。

 (ずっと昔から、アタシを影で励まし続けてくれた紫のバラの人…。)

 震えているマヤに真澄が、背中を向けたまま言葉を発する。

 「濡れたものを着ていると暖まらないぞ。脱いで乾かした方がいい、俺はこっちを向いている。恥ずかしければ、そこのコートでも羽織ってろ。」

 コートを持って、服を脱ごうとするマヤ。

 (どうして、どうして気づかなかったんだろう。その言葉も振る舞いもみんなあたしのためのものだったのに。)


 ≪回想シーン≫

 「おれから奪ってみろ、さぁ来いジェーン。さぁ、どうした狼少女! エサが欲しければ取ってみろ!」
 「このままでは、真夏の夜の夢は失敗だ。」
 「どういうこと?」
 「客の入らない舞台など、なにも価値はない。観客のいない舞台か、見物だ。」


 (みんなあなたの優しさだったのに。わたし、わたし。あなたが、あなたが。)
 回想シーンの間に着替え終わり、ダブダブのコートを着たマヤ。
 「ひどい降りだな、当分やみそうにない。どうやら俺達は、紅天女の聖地に閉じこめられたようだな。いつか、君の紅天女が見てみたい物だ。」

# なんで、そうなる? 話がつながってないぞ!
 「あたし、速水さんに喜んでもらえるような紅天女を演じたい。速水さんに見てもらいたい。」
 「驚いたな、君がそんなことを言うなんて。君は俺を憎んでいたんじゃないのか。」
 「憎んでいました。仕事のためだったらなんだってやる冷血漢だって。」
 「マヤ…。」
 「あなたが、紫のバラのひとだったんですね。そうなんですね。どうしてですか、どうしてあたしなんかにずっと花を贈り続けてくれたんですか。」
 「たしか、初めて君の舞台を見たのは、若草物語のベスだった。可憐だった。とても40度の熱を押して舞台に立ってるとは思えなかった。こんな小さな少女のドコにそんな情熱が潜んでいるのか、心を動かされた。それから、奇跡の人。君のヘレンは感動的だった。何度見ても飽きることはなかった。そして、二人の王女のアルディス姫。忘れられた荒野の、狼少女ジェーン。みんな、スキだった。スキだった。」

 手をマヤの頬に添える真澄。その手に、マヤの涙がつたう。

 「しおりさんと結婚しろ、それがおまえの仕事だ。」
 真澄の心の中に、英介の言葉が響く。

 「薪も終わりか、探してこよう。大事な商品に風邪でもひかれちゃ、大変だものな。」
 「商品? 商品だから、あたしを大事にしてくれるんですか?」
 「他にどんな理由がお望みだ、おチビちゃん。君は将来性のある金の卵だ。だれでも価値のある間は大事にされる。遠慮は無用だ。」

 そう言って、物置小屋を出ていこうとする真澄。しかし、マヤが思い詰めたように叫ぶ。

 (BGM・「Calling」)
 「じゃぁ、遠慮しません。行かないで! アタシを暖めてください。手も足も冷えて、背中がぞくぞくします。だから、だからアタシを暖めてください。」
 「マヤ…。」
 「あたしは、金の卵かもしれないんでしょ。だったら、わがままを訊いてください。」
 「本気で言ってるのか。」
 「はい。」
 「いいだろ、おいで…。」
 そういって手を取る真澄。
 「俺も男だ、責任がとれなくなるかもしれないぞ。」
 「かまいません。」

 わらの上に、どさっと抱き合って横たわる二人。

# オイオイ、ひょっとしてこのまま突入?
 (速水さん、紫のバラの人。たとえ、商品と思われていてもかまわない。今、このひとときだけでイイ。このひとときだけ、わたしにください。)

 「マヤ…。」
 みつめあう二人。おもわずキスをしそうになってしまう真澄。しかし、気を取り直してつぶやく。

 「チビちゃん、眠れ。おれの気が変わらない内に。」
 (BGM終了)
 「今夜は君も俺もどうかしている。目が覚めれば、みんな夢だ。」
 「速水さん…。」
 「眠れ…。」


 朝、コートを羽織って寝ていたマヤが目覚める。横にいたはずの真澄はいなくなっていた。
 「速水さん…!」

 「俺の恋は…、ここで終わりだ!」
 そう独り言を言いながら真澄は一人、宿への道を急いでいた。

# ありゃりゃ、夢は終わりだ…!でキスするんじゃないのねぇ〜

 「次の課題は水、舞台はここです。」
 「水の演技…。」
 「この滝の前で…。」


 「水か、水っていったいなんだろう?」
 「もう、こんなに汚してしもうて。龍神さん怒るで。」
 物思いに耽るマヤの脇で、川の掃除をしている老婆が嘆いていた。
 「あの、龍神さんって?」
 「水の神さんや。」
 「水の神様?」
 「龍神さん、怒らしたら恐いんやでぇ。川も池も滝も、全部の水を治めてるのが龍神さんなんや。怒らしてしもうて、流された村もあるっちゅうことじゃ。」
 「水の力を司るもの…、龍神…。」


 一方、川辺でなぜか水槽に入った鯉を見つめる亜弓。
 「水から離れては生きていけないもの。人間は、赤ん坊は母親の愛がなければ生きていけない。水、命をつなぐもの、愛もまた水。」

 その時、水槽に入っていた鯉が、跳ねて外に出てしまう。

 「愛ゆえに、水からあがった魚。その愛を失ったとき、水の泡になる運命を持った人魚姫。これだわ。私の水、人魚姫。」


 「龍神…、水の心…。」

 相変わらず物思いに耽るマヤのすぐ横に、測道を通る車の窓から空き缶が投げられる。

 「こりゃぁ、龍神さんの罰当たるでぇ!」
 老婆が怒る。しかし、そんな横でもマヤは冷静。
 「汚された水。龍神の嘆き。怒り、龍神の怒り。出来る。出来るわ、私の水…。」


 「水の演技をやってもらいます。」

 亜弓が水の中に入っていく。

# う〜ん、原作とは違ってやはり胸まではさらさないか…(そりゃ、そうだ)
 「美しいあの方、人間の国の王子様、あぁ、お会いしたい。でもアタシは人魚、あのかたは人間。思いがかなうはずもないのに。心はあの方のことばかり。」

 (人魚姫…!)
 マヤが心の中で叫ぶ。

 「もし、あのかたが他の人を愛されたら、私は泡となって消えていく。勇気を出すのよ。この薬さえ飲めば、人間になれる。待っていてください、王子様。」

 薬を飲む亜弓、その後激しく苦しみ水の中に落ちる。

 「人魚姫が苦しんでる!」
 「人魚姫、溺れてしもたんか?」
 演技を見ていた村の子供達がつぶやく。

 (人魚姫だから、陸に上がって息をするのが苦しいんだ…。)

 苦しみながらも陸の上に立ち、手を伸ばしてポーズをとる亜弓。

 「たてた!」
 「やったやった!」
 喜ぶ子供達。

 「それまで!」
 月影の声が響く。

 「人魚姫、美しい水の演技でしたよ。」
 「本当に素敵だったわ、亜弓さん。」
 「さぁ、マヤ。次はアナタの番ですよ。」

 月影に促され、水の中を進むマヤ。その途中で、思わずこけてしまう。観客達の中から苦笑が漏れる。
 マヤはその声に振り返るかのようにして、元気に叫ぶ。

 「北島マヤ、水の演技やります!」

# うんうん、まだまだ安達祐実カワイイのぉ〜
 (さぁ、マヤ。仮面をかぶるのよ。仮面を。わたしは、わたしは龍神…!)


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