池の前を散歩しながら、黒沼に謝るマヤ。
どうしてそんな言葉が黒沼から出るのか、わからないマヤ。
「どうせまだ、自分の気持ちもまだ相手に伝えてないんだろ?」
「どうして…?」
「気持ちを伝えて、それでもおまえの心が届かなかった時には、そいつのことをキッパリと忘れろ。」
相変わらず、窓際でたそがれてる真澄にモンチッチ水城が告げる。
ますますたそがれてしまう真澄。
花屋のショーウィンドウ内に飾ってある紫のバラを見ながらマヤが決心する。
「伝えよう、速水さんに伝えよう。私の気持ちを。」
(BGM・「Calling」)
そして、真澄もまた決心したかのように社長室を出ていこうとする。
そこへ、またもノックもせずに真っ赤っかなブレザーを着た紫織が。
真澄の手に握られている青いスカーフを見るや、いなや、
「マヤさんの所へ行かれるの?」
そう問いただす紫織に対し、真澄が答える。
「僕は…、君のことを幸せには出来ない。」
「行かせない、許さない! あの子になんか、渡さない。お願い…。行かないで…!」
強く、真澄を見つめる紫織。
しかし、その紫織を振り払って真澄が告げる。
「すまない…。」
そう言い残し、社長室を去る真澄。
「真澄さま…。」
青いスカーフを手にしたまま車に乗り込む真澄。そして、大都芸能に向かってひたすら走るマヤ。
車の中の真澄。走るマヤ。二人がやがて道路ですれ違った。
真澄が思わず急ブレーキをかけて止まる。マヤもそれに気が付き、振り返る。
車から降りてくる真澄。なぜか手には紫のバラを持っている。
「あなたが好きです!」
じっとマヤのことを見つめる真澄。マヤがまた続ける。
「紫のバラの人としてじゃなく。速水さん、あなたが好きです!」
「マヤ…!」
「好きです!」
思い詰めた様子のマヤに対し、にっこり微笑みかける真澄。やがて、紫のバラを持ってマヤの方に歩み寄って来た。にっこりとした顔のままで。
ブスッ!
(BGM終了)
にっこりとしていた真澄の顔の口が、突然半開きのままとなる。
それを見たマヤも口が半開きに。
いったい何が起こったのか。
わからない。
いったい何が起こったのか。
「うぅはぁ〜〜〜〜。」
苦痛に顔をゆがめる真澄がやっとの思いで振り返る。
そこには涙を流している紫織の姿があった。
手にはナイフが握られている。
真澄の持っていた紫のバラの花束が道路に落ちる。
その場に倒れ込む真澄。
「うはぁ☆□△ぁ〜〜」
声にならない叫び声をあげる真澄に対し、紫織がしぼり出すような声で伝える。
「愛してるの…。愛してるのよ…。」
「行ってくれ…。」
真澄も苦痛の中、絞り出すように紫織に告げる。
「真澄さん…?」
傍らでは呆然とした様子でマヤが眺めている。
「行ってくれ…。俺を憎んでいる人間は、大勢いる…。早く…。」
紫織をこの場から逃がそうとする真澄。しかし、紫織はその場を離れない。
「いやあぁ…。」
激しく首を振り、真澄のそばにいようとする紫織。
「行くんだ…。行ってくれ!」
真澄の強い言葉に促されるように、「はい」と小さく答え、その場を離れる紫織。
放心していたマヤがあわてて駆け寄る。
「死なないで…。死なないで、速水さん…。」
そんなマヤに真澄がやさしく答える。
「マヤ…、大丈夫だよ。俺も…、君が好きだよ。マヤ、好きだよ…。愛してる…。」
「速水さん…。」
「愛してるよ…。」
苦しそうな真澄。言葉を喋るのがやっとだ。
「君の阿古夜が、紅天女が見えるよ…。」
「速水さん…。」
「マヤ…、虹の世界で君は輝いている…。輝い…。」
そこまで声を出した後、真澄の首ががくっと落ちた。
「速水さん…、速水さん…!」
真澄の体を揺さぶるマヤ。
「速水さん、起きて…。起きてよ、速水さん…! 起きて…、起きて…。速水さん…。」
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